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ワーネバ暮らし~ある日の風景~


ワーネバ最新作「エルネア王国の日々」の配信を記念して企画されたインターネット上アンソロ企画 「ワーネバ暮らし~ある日の風景~」に参加させていただきました。

ルールは「ワールドネバーランドシリーズ」の世界で、
【どの国か】【朝の支度(朝食含む)】【待ち合わせ~一緒に出掛ける】【仕事/訓練/武術(子どもの場合遊びでも可)】【市場で買い物】【帰宅(夕食含む)】【就寝】
の順番で物語を書くというもの。

私は今回、ククリアで一番愛着のあるNPC家族にスポットを当ててみました。

今後も随時、参加者さんたちの素敵なお話が増えていく予定だとか。たくさんのお話を拝見できるのが今からとっても楽しみです。

(リンクから企画者であるハナさんのブログへ飛びます。詳細なルールなどはそちらからどうぞ。)


【ククリア王国~ベッソン家のとある一日~】

 デヴォン地方からナク半島に向かう街道と、アカデ海とワ国を結ぶ街道が交わるあたりに、森を切り拓いて作られた小さな王国がある。豊かな自然に包まれたククリアと呼ばれるその国では、王族も国民も分け隔てなく、のどかな暮らしを送っていた。

 141年24日

 トントントントン――
 台所から聞こえる心地良い音と、茸をソテーする香ばしい匂いで、ぼくは目を覚ました。
「ママ……体はもう、大丈夫なんですか?」
「あら、ジュリアン。起こしちゃった?」
 眠い目をこすりながら台所に立つ母を心配そうに見上げると、母は振り返りながらいつものように優しい笑みを浮かべた。
「……少しくらいなら大丈夫よ。何と言っても、今日は特別な日ですからね」
 久しぶりに台所に立てたことが余程嬉しかったのだろうか、母は楽しげに鼻歌まで口ずさんでいる。
 特別な日――そう、今日はククリア王国の建国記念日。子供たちにとっての一大イベント「ダロスの速駆け」が行われる日でもある。
 久しぶりに家族三人で囲む食卓は、朝食にしては珍しく豪華なメニューだった。父の好物であるバズサンド、ビート草を詰め込みオーブンでじっくりと焼き上げたローストラゴル、クリーミーに練り上げたマッシュポト、ぼくが大好きな茸スープ。
「やっぱり、シアンちゃんの料理はククリア一だよ」
「まぁ、フレンさんったら」
 バズサンドとローストラゴルをいっぺんに頬張った父がそう言うと、母は嬉しそうに微笑んだ。
「でも、シアンちゃん――そろそろ横になったほうがいいんじゃないかな」
 朝から無理をしたせいだろう、次第に疲れの色が見え始めた母を見かねて、父が言った。
「そうですね……少し、休ませてもらおうかしら……。ジュリアン、ママは行ってあげられないけれど、ここで応援していますからね」
 父に肩を抱かれながら、母は力なく笑った。
「はい。じゃあ……いってきます! あ、ママの朝ごはん、とっても美味しかったです」
 苦しそうに顔を歪める母を見ると胸のあたりがチクリと痛んだけれど、ぼくは大好きな母を心配させまいと努めて明るく振る舞うのだった。
 外へ出ると、きりっと澄み切った秋の空が広がっていた。空気はひんやりと冷たく、雲の隙間からは暖かなソルの光が差し込んでいる。
「おーい! ジュリアン、遅いぞ」
 城門の手前で、栗髪の少年が大きく手を振っている。彼は、ぼくの幼なじみで親友。この国の未来を担う王太子さまでもある。
「ごめん、ごめん」
 ぼくは彼のもとへと駆け寄った。
「とうとうこの日がやってきたな! 今年は絶対に一位を取ってみせるぞ!」
「ミーノ、張り切りすぎじゃない?」
 ぼくが笑うと、彼――ミーノ・ウィリアムズは、大真面目な顔で言った。
「そんなことないさ。泣いても笑っても、ぼくたちにとっては最後の速駆けなんだぞ。お互い、悔いの残らないように頑張ろうぜ!」
 勇者の公園へと向かう道中、ミーノはずっと自分の戦略について熱く語っていた。去年の速駆けで惜しくも先輩に敗れ二位に甘んじた彼は、今年こそ一位を取りたいと意気込んでいた。ぼくもここ一年、特訓だと称しては学校裏の草すべりやしーぽんとの追いかけっこに付き合わされてきたから、彼のやる気は十分に理解していたつもりだったけれど、それでもよくぞここまで熱くなれるものだと思わず感心してしまうほどだった。
 公園に生徒と保護者が一堂に会すると、ミーノの父、マイク国王陛下が開会のあいさつに立った。
「今年もまた、平和のうちに建国の日を迎えられ、余も大変嬉しく思う。今日は勇者や先祖を思い、最後まで諦めずに頑張って欲しい。そうすれば、花に込めた我々の想いや願いもきっと彼らのもとに届くことだろう」
 “最後まで諦めずに走り切れば、願いが叶う――”
 この国で、古くから語り継がれている言い伝えだ。あの子と仲良くなれますように――大きくなったら親衛隊員になれますように――それぞれが自分の想いや願いを、心ひそかに一輪の花に込める。
「では、ここから西にある……あれ、東だったか……? ハハ、まぁどっちでもいいか。とにかく、ここから花畑に行って、レドラの花を探してくるんだ」
 アスター神官のラザレスさん――ぼくたちの先輩であるエレナさんとお付き合いしていると専らの噂で、巷では“美女と魔獣”とか言われている――が大雑把な説明を始めた。
「採ってきた花は、この勇者の像の前に供えるんだ。最初に供えた人は“子ども大将”の称号がもらえるからな。みんな、わかったか? ハッハッハ」
 彼は彼なりに、僕たちに親しみを込めて話しているつもりなのだろうけれど、なんせ強面なものだから今年初めて参加する一年生たちは怯えてしまっている。
 ラザレスさんに促されてぼくたちがスタートラインに立つと、観客席から口々に歓声が上がった。
 艶やかな栗髪が印象的な貴婦人――ミーノの母、キャリー王妃も、最前列から手を振っている。横にいるミーノに目を向けると、彼は顔を赤らめて恥ずかしそうにそっぽを向いていた。もう……素直じゃないんだから――ぼくは、そんなミーノが微笑ましくもあり、羨ましくもあった。

「それじゃ、いくぞ~。位置について! よぉ~い……あっ! 夕三刻までには帰ってくるんだぞ! スタート!!」
 
 ラザレスさんの号令で、僕たちは一斉にスタートした。
 公園を一番に飛び出したのは――やはり、ミーノだった。そのあとに続くのは、同級生のジェイソン、ぼくは三番手。そのあとに、下級生の五人が続いた。
 まずは、市場通りから市場を抜けて、ラナンの橋を渡る。市場や橋の上を駆け抜けると、道行く人々から次々と歓声が上がった。
 西の花畑に入ったのは、ぼくたち三人ほぼ同時だった。ミーノは一番近い草むらから赤いレドラを抜きとると、すぐに踵を返して走り出した。ぼくも負けじと、近くの草むらから白いレドラを掴んで、必死に彼を追った。
 レドラの花を摘んだら、今度は牧場のある南通りへと折り返す。酒場を過ぎたあたりで、ぼくと並走していたジェイソンの姿が見えなくなった。後ろを振り返りたくなるのをぐっとこらえて、ぼくはまっすぐ前を見据えた。先頭を走るミーノの背中は少しずつだが近くなっている。公衆浴場の前を通ってダロス区の脇から市場通りへ抜ければ、レースは終盤、ゴールの公園はすぐそこだ。ダロス区前の水飲み場で、ぼくはようやくミーノに追いついた。
「ハァ……ハァ……」
 両手で豪快に水を飲み干しながら、ぼくは彼の横顔をちらりと見やった。彼も苦しそうに息を切らしている。
「ジュリアン……! ここからが、本当の勝負だぜ!」
 ミーノは額にかいた汗を右腕で拭いながら、ニッと白い歯を見せた。一呼吸置いて、ぼくたちは互いに頷き合った。
 負けてなんかいられるもんか! ゴールはすぐそこだ――!



「お兄さん、それ……ください」
 少し背伸びをしながら、ぼくは市場のお兄さんに向かって言った。
「おや、ぼく、おつかいかい? えらいね」
「……ううん、ぼくのママにあげるんだ」
「そうか……」
 お兄さんは少しだけ悲しそうな顔をすると、丁寧に品物を包んでくれた。
「ありがとう、お兄さん」
「どういたしまして。気をつけて帰るんだよ」
 後ろを振り返ると、父が難しい顔をして市場の中を右往左往していた。ぼくはそんな父に気づかれないよう人ごみに紛れ、そそくさとその場を後にした。
「あら、おかえりなさい。パパから聞きましたよ、残念でしたね」
 母はベッドから体を起こして、にこやかに出迎えてくれた。ぼくの父は親衛隊員だ。当然、ぼくがゴールした瞬間もすぐそばで見ていたわけで、だからこそ決まりが悪かった。
「ただいま……あの、これ」
 ぼくは、市場で買ってきた看病スープを母に差し出した。
「早く……元気になってください。それから、もうひとつ――」
 もうひとつ、どうしても母に見せたいものがあった。背中に隠していた花をそっと母の顔に近づける。
「これは……レドラの花?」
 ぼくはこくりと頷いた。白いレドラの花――それは、まるで儚げな母の姿をあらわしているような花だった。怒られてもいい。どうしても、ぼくの願いが込められたこの花を母に見せてあげたかったのだ。
「優しいのね……ジュリアン」
 レドラの花を大事そうに見つめると、母はそっとぼくの頭を撫でた。
「ママ、この花にお願いするわ。私たちが生まれ変わっても、ずっと一緒にいられますようにって」
 そう言うと、母はぼくをぎゅっと抱きすくめた。
「でもね――このスープは……ママには効かないかもしれないの」
 ごめんね、と母は悲しげな表情を見せた。
 あぁ……ママの病気は重いんだ――ぼくの憂慮はついに確信に変わった。どうしよう……ママがいなくなってしまったら……父さんとぼくだけがこの家に残されたら……。考えただけで、悲しくて悔しくて、自然と涙が溢れてきた。
「泣いているの……?」
 母が困ったようにぼくを撫でた。その手の温もりに、ぼくはさらに心を締め付けられた。
「ただいま」
 玄関から父の声が聞こえた。
「……あ、フレンさんが帰ってきたわ」
 父は泣きじゃくるぼくと困り顔の母を交互に見つめてから、ぼくの横へとしゃがみ込んだ。
「どうした、ジュリアン。ミーノくんに負けたのがそんなに悔しいのか」
 ぼくは小さく首を横に振った。
「そうかそうか、自分に負けたのが悔しいんだな。お前はよく頑張った。胸を張っていいんだぞ」
 そう言って、父はくしゃりとぼくの頭を撫でた。父にこんなふうに褒められるなんて初めてのことだったから、ぼくはびっくりして結局さらに泣く羽目になった。いつまで経っても泣き止まないぼくに、父と母は困ったように顔を見合わせている。
「困ったな。これを見せようと思って、急いで帰ってきたというのに……」
 父がそう言って大きな鞄をひっくり返すと、大量の白い塊が床一面に散らばった。
「フレンさんったら、買い過ぎですよ」
 母はくすくすと笑い、父は玄関のほうからさらに荷物を引きずるように運んでくる。
「ほら、ラダぐるみもあるぞ!」
 突然のことでよく状況が飲み込めないでいるぼくに、母が優しい笑みで問いかける。
「ジュリアンは、弟が欲しい? それとも、妹がいいかしら?」
「……!」
 ――ようやく、全てのことに合点がいった。
 最近ずっと、母の具合が悪そうだったこと、今朝の朝ごはんがいつもより少し豪華だったこと、そして、床に転がる大量のいむぐるみ――そうか、そういうことだったのか。
「じゃぁ……ぼくたち、これからもずっと一緒にいられるの?」
 ぼくが嬉しさのあまり母に飛びつくと、二人は驚いたように顔を見合わせて、ほぼ同時に吹き出した。
「ふふ、そうよ。私たちはいつも一緒よ」
「あぁ、来年にはお前もお兄ちゃんになるんだぞ。しっかりしないとな」

 ――その晩、ぼくは夢を見た。
 両親、僕、そして小さな女の子が家族四人で幸せそうに微笑んでいる夢。
 そこは、僕のいる国とは少し違う世界のように思えた。
 ククリアよりも発展した街並み。道も綺麗に整備されている。
 父はぼくと小さな女の子の手を引いて、笑顔の母は白いレドラの花を大事そうに抱えていた。

  「うふふ、私たち家族はいつも一緒よ――」

 翌朝、目を覚ますと、ぼくはそんな不思議な夢のことなんてすっかりと忘れてしまっていた。
「今日はギートの種まきか」
「えぇ、寒くなってきましたね。今晩はシチューにしようかしら」
「それなら……ぼく、茸シチューがいいです!」
 いつもと変わらない朝のひととき。今年も冬の足音がすぐそばまで近づいていた。


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